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0927 米国がAIデータセンターを構築 オラクル、三つの戦略で演算資源の主導権を掌握「データ主権+セキュアクラウド」が成否の鍵に ― 台湾はどう応えるべきか?

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  • 9月29日
  • 読了時間: 6分

なぜOracleが「ワシントンに受け入れ可能な」協力パートナーと見なされるのか

その理由は、創業者Larry Ellison氏がトランプ氏と極めて密接な政治的関係を有している点にある。また、最高経営責任者Safra Catz氏は2016年にトランプ氏の大統領当選後の政権移行チームに加わっており、企業レベルで新政権との関係構築を進める明確なシグナルを発していた。


オラクルとトランプ氏の政治的関係の近さ


2020年2月、エリソン氏はカリフォルニア州ランチョ・ミラージュの自宅ゴルフ場でトランプ氏の資金調達イベントを主催した。同年11月には選挙結果に異議を唱える会議電話にも参加している。さらに、エリソン氏は2024年の共和党予備選候補であるティム・スコット氏を含む共和党系政治家への巨額の資金提供を行っており、保守派への傾斜と政策的指向を示している。主要メディアもエリソン氏を「トランプの友人」と位置づけ、その人的ネットワークを強調している。


エリソン氏とトランプ氏の関係は単なる知己にとどまらず、実質的な政治的協働やリソース交換を伴う長期的な結び付きである。エリソン氏の人脈に加え、キャッツ氏の政権経験が相まって、オラクルは国防クラウドや規制関連の機微な案件(例:TikTok問題)において「優先的に協議可能な相手」として認識されるに至っている。


北米主要クラウドサービスプロバイダー(CSP)の位置づけ整理


Amazon Web Services (AWS)

公共クラウドのリーダーとして「包括性・成熟度」を強調。最も安定した基盤を提供。

主な顧客層:スタートアップから大企業、政府機関まで幅広い層。

主要優位性:

最も多様かつ広範なサービス群(IaaS、PaaS、SaaS、AI、IoT、量子計算など)

世界最大のデータセンターネットワークを保有

完整なエコシステム(開発者、パートナー、Marketplaceを包含)


Microsoft Azure

企業向けクラウド・ハイブリッドクラウドのリーダー。「既存企業システムをクラウドへ移行+AI付加価値」を特徴とする。

主な顧客層:従来型企業、政府、Microsoft製品利用者。

主要優位性:

Office 365、Teams、Dynamics、Windows Serverとの深度統合

ハイブリッドクラウド(Azure Arc、Azure Stack)によるオンプレ・クラウドのシームレス接続

OpenAIとの深い協業に基づく生成AI・Copilotの全面展開


Google Cloud Platform (GCP)

「データ+AIクラウド」に特化したデータ駆動型の先行者。全面展開ではなく重点領域を追求。

主な顧客層:大規模データ・AI活用が不可欠な企業(金融、小売、医療、ゲーム、メディア)。

主要優位性:

BigQuery・Lookerによる先進的な大規模データ分析

TensorFlow、TPU、Vertex AIなどのAI/MLツール群

Kubernetes・Anthosといったオープンソースでの高い影響力


Meta

従来型の公共クラウドではなく、「AIインフラの一部商品化」を志向するAI専用クラウド。

主な顧客層:AI研究機関、開発者コミュニティ、広告・コンテンツ関連パートナー。

主要優位性:

独自大規模データセンターとGPU/ASICクラスターにより自社AI(LLaMAモデル、Reels、広告推薦)を支える計算資源

LLaMAモデルのオープンソース化と、AzureやAWSを通じた配布

外部へのAIプラットフォーム・算力提供を拡大中だが、AWS・Azure・GCPほどの包括性は未達 オラクルの発展ロードマップ


OCIの従来の市場ポジショニング

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)は当初、比較的ニッチな市場ポジションを担っていた。その重点は「エンタープライズ向けデータベースおよびERP顧客」に置かれ、主要な顧客はOracle Database、SAP、ERPを活用する企業である。特徴は「データベース+クラウド」の二輪駆動にあり、以下のコア優位性を有する。

Oracle DatabaseやFusion Cloud(ERP)と強固に結び付いたアプリケーション基盤

特にデータベースおよび高性能コンピューティング分野におけるコスト・性能比の優位性

政府や金融など、厳格なコンプライアンスを求められる市場での強み


しかし、現在のオラクルの発展ビジョンは、単に一般的なクラウドサービスの提供にとどまらず、「AIトレーニングおよび推論の重力センター(hyperscale AI workloads)」となることにある。


まず、OpenAIソフトバンク等と連携し、Stargateのような巨額を投じるAIインフラの共同事業・アライアンスに参画。資本投入およびデータセンター建設を通じ、将来的にAI学習・展開の骨幹インフラ供給者としての地位を確立することを狙う。

さらに、OpenAI、MetaxAIといった大規模AI顧客との長期契約を締結し、クラウド算力および基盤インフラの需要と収益を安定化。加えて、TikTokやAIスタートアップ企業との協業を進め、高性能インフラを武器とした市場突破を図っている。


オラクルのクラウド市場戦略:「競合と協調」路線と「データ主権+セキュアクラウド」の優位性


オラクルはクラウド市場において「競合と協調(コーペティション)」の路線を歩んでいる。具体的には、Microsoft Azureとはデータ相互接続(クラウド間のデータ連携、顧客の併用利用)を構築する一方で、政府機関や大規模企業のITシステム(ERP+データベース+クラウドサービス)の統合領域においては、AzureとOracle Databaseの顧客基盤が大きく重なり、最も直接的な競合関係にある。


Metaも競合の一つではあるが、同時に200億ドル規模のクラウド算力に関する協力交渉を進めている。厳密に言えば、Metaは全面的な商用クラウド事業者ではなく、AIモデルとオープンソースプラットフォームを中心とするエコシステム競合である。ただし、将来的にMetaがLLaMAモデルとクラウド算力を組み合わせて商業化する場合、OCIと同一のAI顧客層を巡って競争する可能性が高い。


AIインフラ市場においては、オラクルはGoogleとAIモデル企業や研究機関向けGPU契約を巡って競合している。最大の競争相手はAWSであり、政府クラウドやエンタープライズ向けAIクラウド契約において、OCIは常にAWSと正面から争わざるを得ない。


さらに、オラクルはNVIDIAと深いパートナーシップを結び、OCI上に世界最大規模のH100/B100 GPUクラスタを構築。NVIDIAのハードウェアによってAI算力を支え、OpenAI、Meta、xAIといったAI大手企業を主要顧客として取り込みながら、その存在自体をOCIの能力を示す「生きた広告塔」として活用している。


台湾サプライチェーンの恩恵:AIサーバー、CPO、シリコンフォトニクス、冷却


オラクルは長年にわたり、米国国防分野や欧州政府向けクラウド案件に注力しており、これらの特殊な協力関係は同社にとって重要な参入障壁(モート)となっている。各国規制当局がデータ保護、データ主権、プライバシーをますます重視する中、オラクルは各地域の法規制に準拠したデータセンターへの投資や、ローカル法規内での運用が可能なクラウドソリューションを提供しており、政府や公共部門にとって高い魅力を有している。


米国におけるTikTok案件では、政策や国家安全保障が関わる中、もしオラクルがデータ託管・監督・主権クラウドの役割を担うことができれば、同社が「データ主権+セキュアクラウド」の優位性を持つことを意味する。これは単なるビジネスの枠を超え、オラクルの差別化された競争力の源泉となり得る。


さらに、オラクルの大型案件およびグローバルなクラウド基盤の拡大に伴い、台湾の関連サプライチェーンに注目が集まっている。特にAIサーバー、CPO光通信、シリコンフォトニクス、冷却モジュールといった分野が焦点となっている。


聯鈞(eLaser):オラクルの光通信モジュール主要サプライヤーとして、800G高速AOC(アクティブ光ファイバーケーブル)製品を担当し、今年から本格的に量産出荷を開始。

緯穎(Wiwynn):オラクルAIクラウド向けハイエンドサーバーの主要組立メーカーであり、最も深い協力関係を持つODMの一つ。

神達(MiTAC Holdings):オラクルAIサーバーの重要な協業パートナーであり、子会社の神雲(MiTAC Computing Technology)がサーバープロジェクトを直接受託。

環宇-KY(GCS):オラクル供給企業であるApplied Optoelectronics(AAOI)のPDチップ主要サプライヤーとして間接的にオラクルのサプライチェーンに参入。

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